カテゴリ: Computer & Game 数学ができないと作れないんでしょ?
よく尋ねられる質問の中に、「テレビゲームを作るには、数学ができないと駄目なんでしょ?」というのがあります。
聞かれる度に「そんなことはないですよ」と答えるのですが、正確には「数学や物理の計算が入った自然現象をコンピュータでシミュレートするようなプログラムを作る場合には必要ですよ」と言わなければならないでしょう。
現実の話、3Dのリアルな映像を扱う場合には、最低でも高校レベルの数学を(三角関数、ベクトル、行列ぐらいは)知っていないと絶対に作れないものです。しかし、「すべてのゲームが高度な計算を必要とするものではない」ということも事実です。
「コンピュータ」と言うと、反射的に「計算」をイメージしがちですが、プログラムの中で本当に計算をしている部分は極わずかです。大部分は、予め用意されているデータを引っ張って来て、それを現在の状況と比較し、その結果によって次に実行する処理を順々に切り替えて行くだけなのです。
ですから、『コンピュータ』のことを『電子計算機』と呼ぶには、個人的には少しだけ抵抗があります。コンピュータのプログラムは、学校の運動会やテレビ番組のプログラムと同じように、コンピュータを動かすための「進行係」という意味合いの方が強いと思うのです。
さて、コンピュータは、どんなに複雑で難しい処理でも、人間が行うよりも、ずっと速く正確に実行できます。しかし、どんなにプログラム言語やコンピュータを理解していても、コンピュータに実行させたい処理そのもの、つまり、「何をやらせたいのか」という処理対象については、人間が理解していなければなりません。
これは、コンピュータに限った話ではありません。
例えば学校の先生を考えてみて下さい。数学の先生もいれば国語の先生もいます。英語の先生に「音楽を教えろ」と言っても無理な話です。それぞれに専門分野というものがあって、それについては他の科目の先生よりも長けているけれど、教師としての基本的なもの(例えば指導力になるのでしょうか?)は、すべての先生が持ち合わせていなければならないはずです。
もう一つ例を挙げてみましょう。今度は運転免許証を考えてみます。普通乗用車もあれば二輪車もあり、原付き免許の人が観光バスを運転するには、やはり無理があります。しかし、道路交通法という基本的なルールは、それぞれ皆が勉強しているわけです。
料理にしても、和食、洋食、中華などいろいろあって、料理人によっては得手不得手もあるでしょう。しかし、食材を見極めたり、包丁を上手くさばいたりする基本的なことは、まずマスターしているはずです。
例えが飛躍してしまいましたが、コンピュータのプログラマも同じなのです。銀行のオンラインシステムや、座席予約システムのプログラムを組む人は、その方面の詳しい知識がなければ絶対に作れないものですし、「経営管理プログラムを作ってくれ」と言われても、「会社の経営の仕組み」を理解していなければ作ることはできません。
英語が分からない人に「日本語と英語の翻訳プログラムを作れ!」と言っても、やっぱり無理な話なのです。しかし、どの分野のプログラマも、プログラム言語やコンピュータについての基本的な部分は勉強して分かっていなければなりません。
そう考えると、「ゲームプログラム」を作るには「ゲームの仕組み」が分かっていなければならないことになります。
プログラマの話ばかりになってしまいましたが、ゲームのキャラクタを画面上で描く、グラフィックデザイナにも当てはまります。
一口にグラフィックデザイナと言っても、いろいろな分野があります。直接ゲーム画面に表示される絵を描く人は、ゲーム機の限られた容量や色数の中で作品を綺麗に見せなければなりません。紙に絵を描くのとは性質が違います。
ですから、例えゲームプログラムを組まないデザイナやコンポーザ(作曲者)でも、コンピュータの知識が必要になってくるのです。
もっとも、最近のゲーム機では、天然色に近い色を難無く表示できるようになって、紙に描くのと変わりなくなってきました。音楽にしても、昔はベルが鳴ったり、貧弱な音しか出せませんでしたが、最近のコンピュータやゲーム機では、CDをはじめ、音源ハードウェアについても市販のシンセサイザーに近い性能を持ち始めています。
昔は「コンピュータで作品を作る=特殊技能=職人」という部分がありましたが、最近はコンピュータの性能が上がって扱いやすくなったことにより、「純粋に感性の優れた各方面の人」がゲーム作りの現場に入ってきています。
「コンピュータに何をやらせたいのか」ということは、それを使う人のアイデア次第で広がるものです。なんでもできるとは言いませんが、この「道具」は、使い方次第で、無限に用途を広げられるのです。
くどいようですが、これは1990年代中頃に書いた文です。この注釈を書いている2006年現在、「道具」の件については言われなくても当たり前な世の中になっていますね。
2006/1/17 01:16 | URI | Computer & Gameカテゴリの記事をすべて読む